こんにちは。くましね薫です。
今日は宮崎駿監督作品『千と千尋の神隠し』の考察の4回目です。
この作品は、異世界に迷い込んだ千尋が、神様のお風呂屋である「湯屋」で働くという物語です。
以前『千と千尋の神隠し』の考察記事をパソコンで書いていたとき、不思議なことが起きました。
それは「ゆや」と入力し変換すると、変換候補になぜか「熊野」と出てきました。
「熊野」といえば、熊野大社や熊野古道、熊野那智大社など、神聖な場所に付けられる名称というイメージがあります。
「くまの」という単語には動物の「熊」の字が当てられ、なんのことを指しているのか分かりずらいですが、本来は「隈」の字が当てられます。
「隈」とは境界のことを表します。
私は以前、福島第一原発のある「大熊町」について考察しました。
大熊町はもともと「苦麻村」という縁起の悪い名前の村でした。しかし本来の名前は「隈村」なのです。
古代この地は、「苦麻川(熊川)」を境に、奥州(東北)と朝廷の領地とに分かれていました。
つまりここが蝦夷(えぞ)との境界線だったのです。
そして宗教学的に解説すると、「隈」とはあの世とこの世の境界線のことでもあります。
そこは、人間と神や靈魂との交流の場であり、人間が神様をもてなす場でもあります。
ちなみに「ゆや」は「斎屋」とも書き、斎戒沐浴(さいかいもくよく)と言って、寺などで身を清める建物を指すそうです。
この「熊野=ゆや」について詳しく調べると、大阪府堺市堺区にある「熊野町」がヒットします。
この地はもともと「湯屋町」と呼ばれていたそうです。
その地名の由来は、この地にお風呂屋がたくさんあったからだそうです。他にも、菅原天神で塩風呂を一般人に施していたからという説もあります。
しかし、明治時代に「湯屋町」という地名が廃止され、熊野神社があることから「熊野町」になったそうです。
しかし、この地にある「堺市立熊野小学校」は「ゆや小学校」と読むそうで、昔の名称が残っています。
「さかい市」にある「くまの」とは、また意味深な場所であります。
よく『千と千尋』の考察で、「湯屋」とは日本の性産業を表していると言われます。
宮﨑駿監督自身も公開直後の雑誌のインタビューでこのことに言及しています。
そして神話学では、娼婦とは天国にいちばん近い存在という意味で、だからキリストが唯一愛した女性がマグダラのマリアなのです。
しかしこれは表向きの解釈で、「湯屋」に隠された暗号は「あの世とこの世の境界」という意味なのです。
だから宮崎監督は、物語の舞台をお風呂屋にしたのです。
水場とは靈が溜まる場でもあり、清める場でもあります。
そして入浴は癒しの効果もあるので、神様を迎え入れるのにぴったりの場所です。
「熊野」とは決して特別な場所ではありません。けっこう身近にあるかもしれません。
海にいるかもしれませんし川かもしれません。山や田んぼかもしれません。
雨の日の空かもしれませんし、稲妻に宿るかもしれません。
もしかしたら本当にお風呂にいるかもしれません。
そこには隠されている神様がいるかもしれません。
探してみてはいかがでしょうか?
神様はそれを願っています。
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ありがとうございました。