宮﨑駿監督最新作『君たちはどう生きるか』考察シリーズ。
前回は、夏子にかかった「呪い」について考察してきました。
今回は、眞人と一緒に不思議の国に迷い込んだ「キリコ」について考察していきます。
~~~以下ネタバレありです~~~
キリコは夏子の家に奉公している7人のおばあちゃんの一人です。
キリコはいなくなった夏子を探していると、吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか』を読み終わった眞人と合流し、「大伯父」が建てた謎の塔へ潜入。すると彼らは大伯父に見つかり、不思議の国へと迷い込むことになります。
不思議の国へ行くと、はじめ眞人はひとりぼっちです。向こうには磐座があり、門には「ワレヲ學ブ者ハ死ス」と刻まれています。
するとたくさんのペリカンが眞人の方へ向かってき、彼を門の中へ押し出します。
そこを小型の帆舟で通りかかったのが、若いときのキリコです。
キリコは事態に気づき、火の魔法でペリカンを追い払い、眞人を助けます。
キリコは風力と潮の流れだけで海を進んでいきます。
まるで、今から数万年前に、世界中を航海した古代の海洋民族のようです。
そうです。宮﨑駿監督は、ここでも私たちの「眠っている記憶」を刺激してきます。
私たちのご先祖さまが何万年も受け継いできた「海洋民族」の記憶です。
宮﨑監督はキリコというキャラクターでそれを体現させます。
私たちは古来、舟で世界中を行き来する民族でした。
今から数万年前。まだ国という概念がなかった時代に、人々は世界中を舟で行き来できました。国という概念がないため、潮の流れにまかせ、遠くの地まで自由に行けたのです(しかしその後、国家ができたため、潮の流れに乗って航海できなくなります)。
日本神話に登場するスサノオは「海の神」です。これは本来日本人は海洋民族で、世界中へ渡っていったことを示しています。
↓参考動画 TOLAND Vlog
しかし、世界中へ渡っていった海洋民族は、騎馬民族として日本へ帰還し、海洋民族の勢力が徐々に失われていきます。
源平合戦とは、騎馬民族である源氏と、海洋民族である平氏との戦いです。
話を戻します。
そんなキリコは、『もののけ姫』のエボシ御前のようにも見えます。
エボシ御前は若い頃は「倭寇」という海賊で、「エボシ」という名前から男装して海賊行為に及んでたと推測できます。
キリコも同じく男のような格好と口調で、まるでエボシ御前の若い頃のようです。
宮﨑監督は『君たちはどう生きるか』で、私たちの本来の姿を、これでもかというくらい前面に押し出して描いています。これが最期の作品だと言わんばかりのボリュームです。
だからこそじっくり物語を追うのではなく、イメージ重視の抽象的な語り口にしたのだと考えられます。
では次回は、ラスボスである「大伯父」について考察していきたいと思います。
お楽しみに!
<参考文献>
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ありがとうございました🫶