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『君たちはどう生きるか』考察②眞人を動かした『君たちはどう生きるか』とは?

前回は、宮﨑駿監督の最新作君たちはどう生きるかを私は「大傑作!」と言いました。

kumashine369.hatenablog.com

 

大傑作ですがとても難解な作品ですので、私がひとつづつ解説していきたいと思います。

 

〜〜〜以下ネタバレありです〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台は太平洋戦争中の日本です。

主人公の眞人は、病院の火災で入院中の母ヒミを亡くします。

しばらくして眞人と父の勝一は、都会から田舎へ疎開します。疎開先は、父の再婚相手であり、母の妹である夏子の実家です。

 

目まぐるしく変化する環境で、少年の眞人は心を閉ざしていきます。

新しい母親とはあまり会話をせず、学校の同級生からはいじめを受けます。

悔しい眞人は、石で自らの頭を殴り、頭から血を流します。不甲斐ない自分が情けなくて、自分に怒りをぶつけたのでしょう。

頭から血を流す姿を見た家族は大騒ぎ。「誰にやられた!?」と迫る父に何も言わない眞人は、ベッドに潜りながらどんどん孤独に陥ります。その孤独は、新しい母である夏子にも伝播します。夏子もまた病床に倒れ、夢遊病のような意識になっていきます。

 

そんな鬱々とした眞人がガラッと変わる瞬間があります。それは、亡くなった母ヒミが眞人にプレゼントした、吉野源三郎氏の小説『君たちはどう生きるか』を読んだ瞬間です。

 

ここで物語は動き始めます。

この本を読み終えた直後、森に入る夏子の後を追いかけます。

 

劇中ではさらっと描かれますが、この本を読んだ前後では、彼の行動が明らかに違っていきます。受動的だった彼の態度が、能動的になるのです。

 

では、彼を大きく変えた小説『君たちはどう生きるか』とはどんな作品なのでしょうか。

 

君たちはどう生きるか』は吉野源三郎が1937年に出版した小説で、彼のデビュー作です。

この小説は、少年「コペル君」「おじさん」の心の交流を描きます。

物語は、泣きながら布団に潜るコペル君から始まります。彼は友達がいじめられている場面を目撃したのも関わらず、その場から逃げてしまいます。そんな自分を「卑怯者」と思い、自分を許せなく泣いてしまい、そのまま寝てしまいます。起きるとそこには母の弟であるおじさんがいました。おじさんは出版社の編集者です。コペル君は友人へ行った「裏切り」を、おじさんに告白します。

翌日、おじさんの一冊のノートを母から渡されます。そこには、昨日のコペル君の告白に対するおじさんの回答でした。

そこには、

“「死んでしまいたい」と思うほど自分を責めるのは、君が正しい生き方を強く求めているからだ。

人間ってものの、あるべき姿を信じているからだ。

さあ、コペル君。今こそ答えを見つけよう。”

 

そのノートには、今までのコペル君との交流でおじさんが気づいたことが書き記されていました。

コペル君はおじさんとの交流から、「人間とは分子のような存在だ」と気づき、「人間分子の関係、網目の法則」を説きます。人は小さな世界で生きているようで、実は見えないところでいろんな人と関わりを持ちながら生きている。だから自分は孤独ではない。そう気づくのです。

 

これは仏教の「縁起」の思想です。自分を定義するとき、他者の情報が必要で、自分=他者となり、最終的には宇宙と繋がるというものです。

小さな世界にいるとわからないですが、実は私たちは壮大な宇宙の一つなのです。

 

「自分は孤独ではない」と悟ったコペル君は、クラスメイトを助けながらも、理想通りに行動できない苦しみの中で成長していきます。

 

眞人はこの物語に心を動かされ、涙します。

コペル君の苦悩を自分と重ね合わせながら、しかし、自分は孤独ではないと知り、涙したのでしょう。

この小説が、彼の心の燃料となり、この後に続く冒険へと繋がるのです。

 

なぜ宮﨑駿監督は、この小説の題名ををこの作品に使ったのでしょうか?

それは、宮﨑監督は「本の力」、「物語の力」を信じているからです。

しかし、本の知識だけでは頭でっかちの人間になります。逆に経験だけを信じ、本を読まない人間は浅はかなだけです。

 

大事なのは

 

本の知識 × 経験値

 

だから宮﨑監督は私たちに「君たちはどう生きるのか!?」と訴えるのです。

そしてラスト、本に取り憑かれて発狂した「大おじ」と対立するのはそのためです。(このことについては後日改めて解説していきます)

 

それでは次回は、そんな眞人をふしぎの世界に導く「青サギ」の正体について解説していきます!

 

お楽しみに!

 

↓次回

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