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『君たちはどう生きるか』考察⑤イザナミを救い出せ!

宮﨑駿監督作品『君たちはどう生きるか』の考察シリーズです。

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前回は、眞人たちが迷い込んだ「不思議の国」「冥界」で、この作品は古代から語り継がれる「冥界下り」の物語になり、宮﨑監督は新しい神話を創造していると考察しました。

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今回は、眞人の真の目的である実の母ヒミを救い出すことについて考察していきます。

 

~~~以下ネタバレありです~~~

 

 

 

 

前回の最後で私は、「ヒミはイザナミだ」、と書きました。

 

イザナミとは日本神話でお馴染みの神様で、夫のイザナミと一緒に「こおろこおろ」と海をかき回し、日本(大八洲)を作りました。これを「国産み神話」といいます。

次にイザナミはさまざまな神様を産みますが、カグツチという火の神様を産んだ際に火傷を負い、その傷が原因で死んでしまいます。

 

そしてヒミも、病院で入院中に火災に巻き込まれ亡くなってしまいます。

 

どちらも「火」が原因で亡くなるのです。

 

そしてその後の展開も似ています。

妻を亡くしたイザナギは、イザナミの会いたくて「黄泉の国」へ行きます。これもまた「冥界下り」で、ちゃんと「黄泉比良坂(よもつひらさか)」を下る描写があります。

 

眞人も最初の動機は違えど、「冥界下り」の真の目的は実の母に出会うためです。

 

子の眞人と夫のイザナギでは立場は違いますが、そこは宮崎作品に通底する「マザーコンプレックス」が湧き出てるのでしょう。宮崎監督が幼少期に体験した病弱な母の死が、彼の物語を動かすのです。

 

ではそもそも、イザナギイザナミの正体は何なのでしょうか?

 

それを解く鍵は、出雲王家に伝わる「出雲口伝」にあります。

出雲王国はヤマト朝廷より前に日本を統治していた国です。

彼らは今から4000年前にインドから渡来し、原住民と同化しながら日本に巨大な王国を築き上げます。

その出雲族が信仰していた神様が、「クナトノ大神」「サイヒメノ命」です。

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この神様は、「縁結び」と「子孫繁栄」の神様です。

しかし、出雲王国が物部氏に侵略され、物部系の秋上氏が出雲の神魂(かもす)神社宮司になります。そのときに、祀られているクナトノ大神をイザナギに、サイヒメノ命をイザナミに変えてしまいます。

なぜ変えたのかというと、出雲の神様を消したかったのと、海洋民族であった物部氏にちなんで「なぎ」「なみ」など海に関連する名前にしたかったのだと思います。

 

なので『古事記』『日本書紀ではイザナギイザナミの名前のまま登場します。

 

しかし、それらの書物を編纂した藤原不比等は、彼らに呪いをかけます。

 

イザナギの冥界下りのは続きがあります。

イザナギが黄泉の国へ行くと、そこにはイザナミがいましたが、彼女の姿は腐乱した状態でした。驚いたイザナギは逃げ出し、怒ったイザナミは追いかけます。

そしてイザナミは、「千引きの岩」という巨石で黄泉比良坂をふさいでしまいます。

先へ進めないイザナミ「一日に1000人の人を殺す」と言い、それにイザナギ「では一日に1500人の人を産もう」と応えてその場を去ります。

イザナギは悲しみに暮れながら、高千穂の地で禊払いを行い、天照大神月読命、素戔嗚を産みます。

 

これはいったい何を意味してるのでしょうか?

それは、元々日本にいた神様を封じ込めたことを意味しています。そして、イザナミ「呪いの神」に変えてしまいました。元は「縁結び」「子孫繁栄」の神様です。それが藤原氏によって、人々を殺す「死神」に変えられてしまいました。しかも日本最初の夫婦は離婚しています。なんだか離婚率が年々上がっている現代の世相を表しているようです。

そして古代の日本は女系社会でした。しかしイザナミを汚らわしい存在に描くことで、女性の力を封じ、新たな神様が生まれることによって、男性中心の社会に変えてしまったのです。

 

これは宮崎作品の重要なテーマになります。なぜ彼は失われし一族の、不思議な力を持つ少女を描くのか。ここに由来します。

 

つまり『君たちはどう生きるか』の作品のテーマは、

「封じられたイザナミ(サイヒメノ命)を救い出せ!」

ということなのです!

 

世界は近代化のために、女神信仰を封じ、戦いを続けながらここまで文明を発展させました。

しかしその科学文明も飽和状態で、行き着くとこまで来てしまいました。

このまま行くと人類は確実に滅んでしまいます。

 

それを回避する手段が、女神の封印を解くことなのです。

 

眞人がヒミを元の世界に導くということは、私たちが封じられた女神を解放へ導くということです。

そのための方法を私は過去に記事にしました。

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やはり宮﨑駿監督がこのタイミングで『君たちはどう生きるか』を発表したのは意味があったのです。

あとは「私たちがどう生きるか」が問題です。

 

そして今回、日本の元々の神様について解説していきましたが、実は千と千尋の神隠しに登場する「オクサレ様」にも繋がります。

 

実は、「オクサレ様」の正体は「クナトノ大神」だったのです!

次回は『君たちはどう生きるか』考察を一旦お休みし、『千と千尋の神隠し』の考察を行いたいと思います。

 

お楽しみに!

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<参考文献>

 

 

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