私が中学のとき、クラスに標葉(しねは)さんという人がいました。
その苗字を聞くたびに、
「なんて縁起悪い苗字なんだ」と思っていました。
大人になり地元の歴史の勉強をしていくと、標葉とは土地の名前だと知ります。
標葉の土地とは、現在の福島県双葉郡の大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村を指します。相馬野馬追のときは"標葉郷"といったりします。
つまり、福島第一原発周辺の地域で、東日本大震災後に帰宅困難地域に指定された場所です。
その事件で、私はますます「標葉って名前は縁起が悪いな」と思ってしまいました。
そこで私は、「縁起が悪い」原因を探るため、まず大熊町の歴史を調べました。
すると、ウィキペディアには、古代この土地の村名が記されていました。
それは、
苦麻(くま)村
ひぇぇぇ〜!!
「しね」とか「苦しい」とか縁起悪すぎじゃないか!!
私はおびえました。
しかし!
私は何か腑に落ちないので、さらに調査を続けました。
すると、大熊町が出版してる『大熊町史』の冒頭に、こんな記述がありました。
標葉郡苦麻村 = クマシネ である説
クマシネ?
なんでしょうか、クマシネ。
クマシネとは、「神に捧げる米」という意味だそうです。
私は衝撃を受けました。
今まで縁起の悪いと思っていた名前が、実は神聖な名前だったのか。
斎木雲州著『出雲と蘇我王国』にも、「“クマ”とは神に供えるための米の古語で、それを栽培した野が、クマノだと言われる」とあります。
そこで思い出したのが、加門七海著『大江戸魔方陣』の記述です。
熊野神社の“熊”とは本来は“隈”の意味で、「境界をあらわす」というのです。
実際7世紀頃は、大熊町にある熊川が関東と東北の境界線であり、『大熊町史』には「縄文文化と弥生文化の境界線だったかもしれない」と記されています。
加門さんは“クマ”について説明を続け、紀州熊野の土地は補陀落という“あの世”の隣という意味があるといいます。
さらに“クマ”を調べると、「川沿いの奥の人が立ち入らない場所、神が住む聖地」とあります!
つまり“クマ”という地名は“あの世”と“この世”の境界線だという事で、その境界線が大熊町の熊川。しかもその川の奥には神が住む聖地があったのかもしれません。
縄文時代にはすでにお米の栽培が行われていたことはわかっているので、神聖なシネハの土地で神にお供えするお米を栽培していたと考えられます。
そこでさらに調査をすると、新地町図書館に蔵書されている『復刻版 駒ヶ嶺の歴史』という本に、地名の語源に関する記述がありました。
そこには、、、
標葉 = 志禰波
とありました。
私はさらに衝撃を受けました!
これは神聖な言葉かもしれない!!
“禰”とは、みたまや、おたまや、など魂を意味する漢字で、神社の職階である禰宜や、古代の天皇の臣下への呼称である宿禰など、神聖な職種につく漢字です。
私は確信しました。
シネハの土地は、古代の聖地であった。
この地から神の意志を波及する土地であった。
しかし、のちの権力者によって侵略され、土地の本当の意味を隠され、霊力を封じ込められた。
そしてその地に原発が建てられ、津波に襲われ、水素爆発を起こし、滅茶苦茶にされた。
(ちなみに福島第一原発の土地は、戦時中は特攻隊の訓練場でした。そのせいで、田舎にも関わらず1945年8月9日に大規模空襲を受けます)
私たち福島県浜通りに住む者は、古代からずっと屈辱的な歴史を歩んできたのです。
そのせいで、権力者に寄り添うことが当たり前な地域性になってしまいました。
しかし、それももう終わりかもしれません。
私たちが本来持っていた歴史を、そろそろ解き明かすときかもしれません。
そのために、私は研究を続けます。
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ありがとうございました😄