前回の続きです。
『もののけ姫』考察は、8回にもかけてお送りしましたが、ではなぜこんなにも考察しなければならないほどこの作品は難解なのか。
しかも難解であるはずなのに大ヒットを記録し、現在も愛され続けるのはなぜか。
そんな不思議な作品『もののけ姫』考察の総括をします。
今回私は、出雲口伝をベースに『もののけ姫』を考察していきました。
そもそも「出雲口伝」とは何なのかというと、日本最初の王国である出雲王国の王家に伝わる口伝です。
この口伝には、『古事記』や『日本書紀』といった日本の正史には記されない歴史が伝えられています。
つまり、日本に渡来してきたから天孫族に消された歴史です。
それは、縄文人の正体であり、東北に追いやられた蝦夷の正体です。
そこを知らないと、『もののけ姫』の根本を理解できません。
しかし、宮崎駿監督は、劇中でそのことを説明しません。
なぜでしょうか?
理由の一つが、説明よりも作品のテンポを重視したからだと思います。
説明セリフを入れると、どうしても物語の進行が止まります。
もう一つの理由が、公開当時、出雲口伝はまだ明かしてはいけない歴史だったからです。
出雲王家・富家先代の当主は、80年代に出雲口伝を公開する本を執筆しますが、発売直前で出版中止になります。
つまり、出雲口伝は権力にとって最大のタブーだったのです。
実際出雲口伝の本には、今までの歴史がひっくり返る内容が記されています。
藤原不比等が『古事記』『日本書紀』を製作する際、そのほかの歴史書は全て破棄し、隠し持っている者は処刑されました。
隠された歴史を伝承するのも命懸けな時代が長く続いたので、宮崎監督もギリギリのところで物語を描かなければならなかったと思います。
しかし現在は、出雲口伝が公開され、今上陛下自身が古代の龍神について言及されていることを見ると、真の歴史が開示される時なのだと思います。
そして、『もののけ姫』が難解な理由の最後が、宮崎駿監督は「神話」を作っているからです。
神話を現在の感覚で読むと、支離滅裂で不条理な物語の連続で、どうしても読みづらいし、よくわかりません。
実は神話には、宇宙創造の謎が暗号として組み込まれていて、それを解読する必要があります。
その仕組みで宮崎監督は物語を紡いでいると考えられます。
だから、『もののけ姫』以降の宮崎作品は難解なのです。
しかし、圧倒的な知識をベースに、深層心理の底の底まで潜った物語は、私たちの集団的無意識をバチバチに刺激し、魂を震わします。
この世では無いあの世に意識が繋がってしまう感覚。
これは映画を見ながら悟りを開く感覚です。
最新作の『君たちはどう生きるか』はその極みでしょう。
密教の曼荼羅の世界観のなかで、瞑想してるような感覚に没入できる作品です。
宮崎駿監督は、これほどハイレベルな境地ながら、エンターテイメント作品を作り出している、恐ろしいクリエイターなのです。
その境地で爆発したのが『もののけ姫』なのです。
みなさんも、私のブログを参考に、もう一度『もののけ姫』をご鑑賞ください。
この物語のもう一つの姿に出会えるかもしれません。
参考文献
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