前回は、タタラ場の場所は島根県(出雲)の山間部であり、エボシ御前率いるタタラ場勢力も出雲族であり、『もののけ姫』とは「出雲族が自分たちの神様を殺す物語」と考察しました。
と言うことは、シシ神様も出雲の神様であることがわかります。
では、シシ神様の正体はなんなのでしょうか?
私は、シシ神様は出雲族の神である「クナトノ大神」だと考えます。
なぜそう考えるのか。
それは、『もののけ姫』考察1回目で取り扱った、福島県新地町・鹿狼山の頂上に鎮座する「鹿狼山神社」のご祭神です。
私は、鹿狼山に伝わる「手長明神伝説」が、『もののけ姫』のキャラクターのモデルではないかと考察しました。
と言うことは、シシ神様の正体も、鹿狼山神社に祀られている神様にヒントがあると考えました。
調べてみると、神社の案内板にご祭神が記されています。
そこには「大山祇神」と記されています。
大山祇神は、『日本書紀』ではイザナギがカグツチを切ったときに産まれる神様で、その後、山の神様になります。
しかし、出雲口伝では「大山祇神=クナトノ大神」と伝えられています。
クナトノ大神とは、以前も説明した通り、出雲族が信仰していた「サイノカミ信仰」の神のうちの1柱です。
つまり、
手長明神=シシ神様、
ならば、
シシ神様=クナトノ大神
ではないでしょうか?
クナトノ大神は、子孫繁栄の神様で、神々を産む神様でもあります。
生命の生死を司るシシ神様と同じです。
『もののけ姫』ではさらにキャラクターを深掘りし、クナトノ大神の荒御魂をディダラボッチとして登場させます。デイダラボッチに怒りを抱かせることによって「死神」となり、動植物の命を奪います。
「神」とは優しい部分だけではないのです。
時には怒り、災いを引き起こすのです。
シシ神様は下界にいるときの仮の姿で、本来の姿がデイダラボッチ=クナトノ大神なのです。
ちなみになぜシシ神様は鹿の姿なのか?
それは鹿は神の使いだからです。
古来から鹿は人々と密接に関わり、鹿の骨は占いにも使われます。
しかしその後、鹿たちは天孫族の味方になります。
武甕槌(タケミカヅチ)命が出雲へ進軍する際、鹿の神様である天迦久神(アメノカグノカミ)に乗りながら出雲へ向かいます。
これは狼も同じで、ヤマトタケルの東征の際、狼はヤマトタケルの守護神になります。
これもヤマト朝廷に取り込まれる出雲族を描いているように見えます。
つまり、シシ神様やモロの君は、ヤマト朝廷への最後の抵抗勢力なのです。
彼らを眷属として、クナトノ大神は森で暮らしていたのです。
以上考察してきたように、シシ神様とは出雲族の失われた神様であるクナトノ大神であると考えられます。
では次回は、「なぜタタリ神は蛇なのか?」について考察していきます。
次回へ続きます。
参考文献
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